OUR DEVELOPMENT PHILOSOPHY
ヴェルトが創り上げる製品・技術・サービスには、ネットのマイナス面をうまくリバランスし、一人一人のためにリアルな生活をポジティブにアシストするための開発哲学が取り入れられています。二つのストーリーと弊社の開発哲学を取り上げています。
平均人は存在しない
1940年代の米空軍は、ひどいときには一日に17人ものパイロットが墜落事故に遭うほどの、飛行機制御の不安定さに頭を抱えていた。電気系統やパイロットの飛行技術など様々な要素に疑惑の目が向けられたのち、最終的に原因と考えられたのはコクピットだった。1926年に初めて設計されたコクピットは、その当時の何百人もの男性パイロットの身体データの平均値をもとに規格化されていた。 その後1950年に空軍は改めてパイロットの体を計測し、最新のデータを集めることを決めた。4,063人から得られたデータを基に、身長、胸回りや腕の長さなど10カ所の平均値を割りだした。そして、10項目すべてにおいて平均範囲におさまるパイロットがどれだけいるかを調べて衝撃を受けた。4,063人の内10項目全てが平均内の者はただの一人もおらず、3項目だけに絞っても該当する者はたったの3.5%しかいなかったのである。平均的なパイロットは、この現実世界のどこにもいない、統計世界のみの存在に過ぎなかったのである。 空軍はコクピットの設計を平均に基づき規格化されたものから、パイロットが個々に調整可能なものへと変更した。そして、飛行技術は格段に向上したという。
“The End of Average” Todd Rose著 よりストーリーを抜粋
フィルタリングされた情報の世界
2011年のTED Talkでジャーナリストのイーライ・パリサーは、インターネット企業が私たちの好みに合わせて情報をパーソナライズするにつれ、偏った情報ばかりにふれて新しい情報や視点を得る機会が減らされていると警鐘を鳴らした。パリサーはネットのレコメンドが生むフィルタリングされた情報を「フィルターバブル」と命名し、自分のフィルターバブルの体験を紹介した。一つは、彼のFacebookで、保守派よりリベラル派の友達のリンクをクリックすることが多いため、パーソナライゼーションの機能により、ある日保守派の人が消えてしまったという事例。党派的には進歩派だが、保守派の人とも交流しているし、保守派の考えを聞いたり、何にリンクしているか見たり、何か学びたいと思っているのに本人に相談もなく削除され驚いたと語った。もう一つは、2人の友人にGoogleで「エジプト」と検索してもらったところ、政変という重大な事件があったにもかかわらず、一人の友人にはエジプトのデモ関連の記事が全くなく、もう一人の友人のページには政変のニュースばかりであったというもの。私たちは「フィルターに囲まれた世界」に閉じ込められ、自己の世界観に疑問を投げかけたり視野を広める情報に触れる機会を失っている。
“Beware online filter bubbles ” Eli Pariser TED Talk より
全体平均ではなく
その人の本質を基点に考える
私たちが日々見ている画面の多くは、ビッグデータに基づいたレコメンデーションで溢れています。それは便利さや心地良さを提供する一方で、フィルターバブルを通して個を狭い領域に、そしてバーチャルな世界へと閉じ込めていることも事実です。ヴェルトは、一人一人のデータに違う使い方があっても良いのではないかと考えています。スモールデータであっても、個人の本質的なデータ群から何かを引き出し、個人にメリットとして返すこと。他者のアルゴリズムによるレコメンデーションも役立ちますが、大切な行動を起こす時には、自分で発見する何かこそ、その人の行動を運命付けるべきではないかと考えます。そしてもう一つ、ヴェルトが推奨することは、バーチャルな心地良さに時間を使うより、思わぬ発見をする旅に誘うこと。ヴェルトはリアルな世界とネットを長時間快適に繋ぐタッチポイントとしてIoTをテーマに選んできました。平均より個を、レコメンデーションよりセルフディスカバリーを、バーチャルよりリアルを。サステナブルなコネクテッド社会を見据えたヴェルトの提供する価値には、これらの哲学が貫かれています。